奈良県立奈良高校(奈良市)の女子生徒2人が赤っぽい色の多いオオセンチコガネの中で、奈良公園周辺のものが瑠璃色に輝く謎に迫り、22日に奈良市で開かれた第1回アジア土壌動物学会(島野智之 会長)で発表しました。
発表したのは同校3年の松山蓮奈さん(18)と福島澪月さん(17)。2人は2年生の時から探究課題としてオオセンチコガネの羽の色の違いの解明に取り組んできました。オオセンチコガネは哺乳類の糞を食べる昆虫(糞虫)で、瑠璃色のものが多い奈良公園などではルリセンチコガネとも呼ばれます。
2人がこの研究を始めたきっかけは、金属のような光沢でキラキラと輝くオオセンチコガネに興味を持ったこと。調べてみると、奈良公園のオオセンチコガネは瑠璃色ですが、全国では赤っぽい色が多く、三重県は緑、京都府は赤緑が多いことが分かりました。
色の違いはなぜなのか。この謎を解きたい、と考えた2人は学校を通して京都大学理学部が女子中高校生対象に実施している理学探究活動推進事業COCOUS-Rに応募。研究内容などの審査を経て大学生や大学院生とチームを組んで活動するメンバーに選ばれた2人は1年余りの間、月2回、京大の大学院生にオンラインで相談するなどしながら研究に取り組みました。
2人は奈良公園周辺や三重県、京都府などで集めた色の違うオオセンチコガネの羽について電子顕微鏡で分析。羽には5種類の元素、酸素▽ナトリウム▽マグネシウム▽カルシウム▽カリウム―が含まれており、色の違いによって各元素の量に差があることなどを突き止めました。また、食べた糞の違いによる摂取栄養素の違いも影響している可能性があるといいます。
2人は受験勉強をしながらこの研究に取り組んできました。また、この日の発表はALT(外国語指導助手)からもアドバイスを受け、英語で行いました。
発表を終えた松山さんは「基礎研究(※注)に取り組む研究員になり、人を助けたい」、福島さんは「獣医になって家畜の命を守りたい」とそれぞれ将来の目標を語りました。
※注=「宇宙はどのようにして生まれたのか」など、まだ、だれも知らない真理を追究する研究活動。成果が出るのに長い時間がかかることがあるが、私たちの暮らしを大きく変える可能性を秘めている。
(取材/山本夏美代記者、2024年8月27日付1面)
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